何らかなアクシデントで損傷してご入庫いただく”愛車”にはそれぞれの事由、経緯、があります。
入庫車の多くは、自損事故での軽い凹み、スリキズ程度のもので、保険は使わず自費での費用負担となります。
今回は、対物事故(出会い頭事故)で相手側がトラック、当該車はベンツで左側面は損壊状態にあるということと、”過失割合” が生じる可能性を含め最初から難儀を予感させるものでした。
ベンツのお客様は温和で気さくな方で、弊社とは長いお付き合いをさせていただいております。
まずは、事故状況をお聴きして凡その経緯、事由は把握したのですが、お客様は多分に相手方(トラック)の一方的な過失(100:0)を主張されており、その”トラックドライバー”も自分の非を認めて真摯に謝罪をしているということです。
もちろん、警察の現場検証、相互の保険会社への事故調査を経て、当事者は今後、各々保険会社に過失割合を委ねることになります。
ここで第一の問題は、過失割合を保険会社の見解として当時者”双方”が了承すれば折衝はスムーズにいくのですが・・・ (トラックドライバー側は専門の担当者が交渉にあたるそうです。)
この過失割合が決定しないと、このベンツの修復作業は着工することができません。(車両保険は未加入)
早速、相手方の保険会社より当該ベンツの損害状態の立会調査に来られました。
当該車の損傷個所を写真に収めて持ち帰り概算見積額を算出後、連絡をしてくれることになりました。
本来、当方の工場側が先ず見積額を算出して保険会社にその見積額をアジャストしてもらうのが通常なやり方ですが、当該ベンツの左側面は損壊状態のため保険会社に概算見積を依頼したのです。
保険会社の概算見積は、交換パーツだけでも凡そ100万円を超える額となり工賃、塗装代を加えると200万円近い見積となってしまいました。その他、左リヤエアサスペンション辺りから時たま異音が発せらということです。(このエアサスの見積は別途となるそうです。)
第二の問題は、この概算見積額からすると相手方保険会社は ”全損扱い”にする可能性が出てくるということです。
当該ベンツの年式、グレード、走行距離数、流通相場等から ”時価額” が導き出されます。
見積額がこの時価額を上回った場合、全損扱いとしてその上限を設定するということです。
過失割合、全損扱い、そして時価額と当該ベンツのお客様には3つの問題に直面したのです。
(お客様としては、聞き慣れない言葉に戸惑ってしまいます。)
お客様は、過失割合の決定を待たずに、正式な見積額がでれば、一時立替払いするゆえ、早々に着工してほしい旨を要望なされました。
全損扱いとなった場合、最終見積額が出た段階で相手側保険会社へ何とか”時価額の調整”をしてもらい、”超過分”の軽減を図るしかありません。
このようなケースでは対物賠償保険に「全損時修理差額特約(対物超過特約)」が付加されていれば、プラス500,000円までは”超過分”修理費用としてのみ認められることもあります。
当該ベンツの時価額は保険会社の調整と配慮もあって意外と高額な提示となったのです。
お客様は当該ベンツには特別な思い入れがあり修復することが先行していましたが、事故当時よりも冷静になって考えると、その時価額での範囲で同車種、同年式、同グレードのベンツの買い替えも検討するようになったのです。
早速、ネット検索で調べてみると、同色(黒色)を外して”シルバー色” であれば年式、グレードも同じで走行距離数も少なく極めて良好なベンツが一台見つかったのです。
お客様は、今の損壊状態からどこまで修復、復元されるかは不安であり、当該事故に伴う追加作業(左リヤエアサスペンション辺りからの異音)の可能性があることも考慮して、買い替えを選択なされたのです。
数日後、そのベンツはオークションによって首尾よく落札されました。
事故翌日、無残な姿でレッカー搬送されてきたベンツは、難儀抱えての折衝スタートでしたが、一連の経緯のなかで相手側ドライバー、保険会社担当者等々の好意と積極的な事後処理で円満な解決がなされたのです。
ちなみに、過失割合は90:10ということで示談されることになりました。
このようなケースの事故処理には多大な時間を要するのが常ですが、今回のように双方が納得、満足いく形で解決に至ったことに一先ず安堵したのです。 今回は 時価額 の評価が大きなポイントとなったのではないかと思うのです。 ハイ!!