No.400回      ”優しさ”と、”心のゆとり”のある人生!!

今回は、400回を記念して、是非、皆様に
読んでいただきたい記事を”コピー掲載”させていただきました。

辺銀愛理 ラー油はたった一人の主人のために作った
「辺銀食堂の石垣島ラー油」の生みの親、辺銀さんの人生哲学とは?

「辺銀食堂の石垣島ラー油」の生みの親である辺銀愛理さんインタビュー記事です。石垣島への移住を決断し、食をテーマに歩み続けた愛理さんの人生哲学について日経DUAL編集長の羽生祥子がインタビューします。

辺銀愛理(ぺんぎん・あいり)

1961年東京都生まれ。米国コロラド州立大学に留学後、リクルートに入社。旅行情報誌の編集、広告に携わり、中国人の夫に出会い結婚。東京で6年働いた後、1999年に石垣島に移住し、辺銀食堂を開店。「辺銀食堂の石垣島ラー油」が大ヒットする。夫婦の半生は『ペンギン夫婦の作りかた』で映画化された。

どういう暮らしなんだろう?という興味やワクワクしかなかった

羽生

都会のビジネスの中心ともいえる広告業界の仕事から、石垣島での自然に寄り添う生活に切り替えることに不安はなかったんですか?

愛理

不安? 何に対する?

羽生

例えば、シンプルに「稼ぐ」という点で。

愛理

初めて石垣島を主人と旅したときに、「いいね。ここ住みたいね。仕事あるのかな」って開いた地域の雑誌に求人広告入っていたから大丈夫かと。厨房補助とか清掃員とか仕事はいっぱいあると分かったんで「やっていける」と思いましたよ。

羽生

未練はなく?

愛理

何に対しての未練?

羽生

うーん、東京で積み上げてきた場所へはもう戻れないかもしれないという未練でしょうか。

愛理

1ミクロンもありませんでした。第一、石垣島での生活はまだこれから始まるのだから未知の世界で、東京生活よりいいか悪いかなんて比較さえできない。どういう暮らしなんだろう?という興味やワクワクしかなかったですね。

羽生

未知の世界を切り開くサバイバル力あってこその決断だったんですね。

愛理

そうかなぁ? いい加減に生きてるだけなんですけどね(笑)。石垣島で子どもを産み育てる決断をしてよかったなと思ったことがあって、うちの息子を東京に初めて連れていったときに満員電車に乗ったんです。私はつり革につかまっていたんだけど、彼はトコトコトコと大人の隙間を縫ってシートに座っている人たちの中で一番優しそうなおばちゃんを見つけて、チョコンと膝の上に乗ったんです。

羽生

あら〜(笑)。

愛理

沖縄育ちの子どもたちって、そうなんです。「いすが足りない時は座り心地のいい大人の膝に座ればいいさ〜」っていう文化が残っているんです。

羽生

いい文化ですね。

愛理

私が嬉しかったのは、息子が「自分を助けてくれそうな人」「頼りにできそうな人」を瞬時に見つけられたことだったんです。私は10代で単身留学した経験から「困ったときに自分を助けてくれるのは、身近にいる親切な人」だと実感しているんです。その力さえあればどこでも生きていける。沖縄での生活を通じて、息子がその力を身につけているのかなと感じられて嬉しかったですね。

羽生

なるほど。

愛理

40代で産むと、いつ自分が死ぬか分からないという現実的なリスクがあるわけですよ。何を子どもに与えるべきかと考えたら、お金よりも「親がいなくなっても生きていける力」だと思う。だから、親にべったりではなくて、上手に周りを頼りながら自立して生きている子に育てようと、それだけは気をつけてやってきました。

辺銀食堂は「息子に食べさせたいもの」だけを出している

羽生:

もう一人の子どものような存在かと思われる「辺銀食堂の石垣島ラー油」についても聞かせてください。いまや入荷数カ月待ちといわれるヒット商品ですが、当初から全国的ヒットの想定はされていたんですか。

愛理:

まったく。そもそもあれはたった一人の主人のために作ったラー油なんですから。私と生活するために、中国の西安からはるばるやってきてくれた主人を喜ばせるために、彼が好きな調味料の配合を考えて自宅のコンロで作ったのが始まりなんです。今もレシピは変えていないです。

羽生:

売れるために、ではなく。発売からもう15年以上経つんですよね。

愛理:

はい。ターゲットはたった一人。そこがぶれるとダメですね。同じように辺銀食堂は「息子に食べさせたいもの」だけを出しています。化学調味料は使わず、できるだけオーガニック、願わくばワイルド(野生・自生)なものを。自分の食卓を再現するように食堂を作っているんです。

羽生:

「成功した」という達成感はありますか?

愛理:

どうでしょうね。とりあえず食べていけているから十分だと思います。移住当初は時給550円の厨房アルバイトから出発しましたから。そこから考えると発展しましたね(笑)。アパートの家賃が7万円したのに、二人で稼いだお金が1カ月で13万円。家賃払って、携帯代や光熱費を払ったらカツカツだったんだけど、うみんちゅ(漁師)の大家さんがベランダに魚かけてくれたりね。誰かが玄関に野菜をどっさり置いてくれたり。周りの人の優しさにずいぶん助けてもらいました。

羽生:

きっとご夫婦も周りに与えていらっしゃったんでしょうね。

愛理:

いや、心配かけていただけじゃないかな(笑)。

羽生:

ラー油を作る過程ではご苦労はあったんですか。

愛理:

苦労はないけれど、素材にはこだわりましたね。沖縄では70歳以上のお年寄りは地上戦を乗り越えてきた幸運を持っているといわれていて、彼らから受け取る恵みを「あやかり」と言うんです。ラー油に使う素材として入れている、ウコンやピパーチの作り手は70歳以上のはるさー(畑で農作物を作る人)。だから、うちのラー油は「あやかりラー油」なんです。彼女たちの生産量がうちの生産量だから、たくさん売れるとしても量を増やせないんです。

羽生:

なるほど。

愛理:

「売れるんだから作ればいいじゃない」とはよく言われるんですけど、そこは譲れないところですね。大手メーカーから「契約料を支払いますから、うちの工場で作りませんか?」というお話もあったんですけど、「ありがたいお話ですね。どこで作るんですか?」と聞いたら「弊社の千葉工場で」って。それじゃ「千葉ラー油」になっちゃうよねってことでナシになりました。うちで働いてくれているスタッフも継続して働けないとダメですからね。

羽生:

今何人くらいの方が働いているんですか?

愛理:

50人くらいかな。みんなの仕事もきちんと確保していきたいし、一番は口に入れるものに対しては正直でありたいという気持ちが強いんです。ネイティブアメリカンの方から教わったんですけど、「その土地のものを食べると、その土地の一部になる」という言葉があるんですって。すごく好きな言葉。たとえスプーン1杯でも、石垣島産の食材で石垣島で作ったラー油を食べていただけると、石垣島という土地の力を届けられる。そんなものを作っていきたいという思いはずっと変わらないです。

羽生:

コピー&ペーストが簡単な時代だからこそ、貴重ですね。

愛理:

そうかもしれませんね。

その土地に対していかに謙虚になれるか

羽生

従業員の方の「働き方」に関しては、何か意識されていることはありますか?

愛理

うちはスーパーフレックス制です。結果さえ出していれば、急な遅刻や欠席に関する相談も聞き入れています。

羽生

すごいですね……!

愛理

東京で働いているときに、子どもの発熱で早退した同僚が気まずそうにしたり謝ったりしている姿を見るのが気の毒だし、組織としてもっといい方法はないかなと考えていたんですよ。仕事さえしてくれれば十分。大人の職場だから最低限の思いやりは持とうね、というルールは共有しているけれど。「あの子、家族の看病で大変そうだからご飯作って持っていってあげようか」といったやりとりもよくあっていい感じですよ。

羽生

子育てや介護中の方にはとてもいい仕組みですね。

愛理

正社員、パート、アルバイトという区別もしていなくて、全員に社会保険も付けているんですよ。シンプルで、働きやすい環境づくりというのも私の仕事ですね。

羽生

素晴らしい取り組みだと思います。「地方創生」が政府も掲げるテーマにもなっていて、移住に興味を持つ人も増えている感覚があります。移住成功の条件というのはあるのでしょうか?

愛理

それは明らかで、その土地に対していかに謙虚になれるかだと思います。大都市から来る人の失敗パターンとして「都会からきてやっている」という態度が見え見えで、現地のルールに適応しようとしないというケースは本当によく見られますよ。例えば、何かの回線が壊れたとして、東京であればその日のうちに業者が来てくれますよね。石垣島だと1週間後になるのはざらですから。それを待てるか待てないかというのはとても大きいですね。この場所を「お借りします」という気持ちでないと、やっていけないですね。

羽生

尊重する気持ちが大事だということですね。ご自身のキャリアや人生として、今後はどんな展望をイメージされているんですか?

愛理

今54歳ですが、イメージとしては60歳を目処に引き継げるものは引き継いで、身軽にコンパクトに整理していこうと思っているんです。海外からのオファーもいろいろいただいているので、海外向けに沖縄や日本を発信できたらいいかなとぼんやり描いています。60歳になる頃には子どもも18歳を過ぎて、もう自分で生活をさせてもいいかなと思うので。

羽生

60歳は人生時計でいうと20時。60代からは何をされるんですか?

愛理

まだ主人にはちゃんと相談していないけれど、南インドに住みたいな〜と思っています。

羽生

南インドですか!

愛理

そう。この間、2週間くらい旅してきてすごくよかったから。フレッシュスパイスが自生している山がある環境で小さな小屋を立てて住めたら最高。それが今の夢ですね。

羽生

そうすると、また愛理さんを追っかけて南インドに押しかける人が増えそうですね。

愛理

こっそり行きます(笑)。

羽生

ありがとうございました。

愛理

こちらこそ。また石垣島に遊びに来てくださいね。

いかがでしたか?
今、なにか失われていきそうな人間としての優しさ思いやり、そして、心のゆとりを感じさせてくれるお話でしたね・・・・
優しさを受けたならば心に刻んで、・・・優しさを分けてあげたならば水に流す心を・・・ハイ!!

 

 


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